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** 戒Side **
さっきから穴が開くほど響輔が書き出したノートの設問を見つめている。
けど、見てるだけじゃ当然ながら答えなんて出てこやしねぇ。
高校の宿題は簡単に終わったってのに。
「だー!分かんね」
俺はノートを投げ出し、諦めてコーラをストローでズズズと啜った。
「ギブアップには早いです。もっと考えてください。
戒さんはミステリー小説も大好きでしょう?俺なんかよりずっと頭が柔軟な筈」
響輔は簡単に言うけどなぁ。
「んなこと言ったってなぁ。小説と現実じゃ違うんだよ。
『事実は小説より奇なり』って言うだろ?
あ、それ誰かも言ってたな、誰だっけ」
「イギリスの詩人。ジョージ・ゴードン・バイロンの言葉じゃないですか?
Truth is stranger than fiction.」
「知ってんよ。てかお前めちゃくちゃ理数系なのに、良く知ってんな」
さっすが東大なだけある。
「バイロンじゃなくてもっと身近でもっと最近…」
俺は考え込んだ。
「さぁ。本で読んだんじゃないですか?」
響輔冷たいし。
俺はすっかり飲み干して氷だけになったグラスを目を細めて覗き込み
「あ、そだ。変態ドクターだ」
ふと思い出した。