あたしはおっちゃんの前の席に回りこんだ。
「おっちゃん!その話詳しく聞かせて」
急にそんなことを言い出したあたしに千里は怪訝そうに首を捻ってる。
「聞いてどーすんだよ。お前んとこと何も関係ねぇだろ?」
関係……
あんだよ。
スネークか白へび、どっちかは必ず関わってる。
どっちかの仕業だ。
「詳しくも何も…、表向きは捜査自体打ち切られてる。残念だが…」
表向きは…て、じゃぁおっちゃんじゃない誰かは極秘に捜査してるってこと?
警部補のおっちゃんにさえ極秘ってことは、相当上の刑事が何らかの事情で情報を握りつぶしてるってことか。
「それに千里が言うように龍崎組は何の関係もない。
大体、龍崎会長がクスリに関しては煩いからな。
組員も、お上の目より会長の目が怖くて手が出せないってのが現状だろうよ。
お前も怖い叔父さんを持ったもんだな~、いや…いいんか?
とにかくお前が心配するようなことは何もない」
おっちゃんはやや疲れた声で答えてくれて二本目のビールに手を伸ばす。
叔父貴の話はともかく。
「打ち切られたって何で?」
どうしてその事件が極秘扱いされるのか気になった。
食いつくあたしに千里は怪訝そうにしてたけど、おっちゃんは酔っ払ってるのか気にした様子がなくペラペラ喋ってくれる。
「さっきも言ったろ?上からの命令だ。
ったく、もと華族だか何だか知らねぇけど、女のくせにエリート組だからって偉そうにしやがって」
おっちゃんは忌々しそうにビールの缶のプルタブを開けてる。
女―――……?
おっちゃんの上司は女だってのか。マルボウに女って珍しいな。
それよりも…
「「家族??」」
あたしと千里は顔を見合わせて目をぱちぱち。
「華族だ。その制度がまだ日本に残っていたとしたのなら、まぁ公爵夫人みてぇな身分だな」
公爵夫人……へぇ、ホントのお姫様ってわけか。
「世間知らずのお嬢ちゃんが、同じエリート組で一課の…これまた財閥のボンボンと手を組んで裏でこそこそ何かやってやがる」
おっちゃんの口から難しい言葉が出てきて
「財閥…?」と首を捻ると
「ああ、今はコンツェルンとか言うんだったな。俺ぁ横文字は苦手だ。
とにかく家が莫大な財産を抱えてる金持ちのぼっちゃんだ」
とまた深いため息を吐きながら答えてくれた。
その息がアルコールの臭いをたっぷりと含ませていて、あたしたちが到着する前から飲んでいたことが分かった。
「つまりおっちゃんの上司は金持ちでエリートな上司だってこだよな」
あたしが人差し指を立てて確認すると
「そうだよ!悪かったな金持ちでもないし、三流大学出で!」
おっちゃんは目を吊り上げてまたもビールを飲んだ。
おっちゃん…
荒れてるな。



