「てかそろそろ中行かね?ここあちぃ」


千里はTシャツをパタパタ。グレー色のTシャツは襟ぐりが汗で濃く変色していた。


あたしも暑い。額から汗が流れ落ちるのをタオルで押さえてる感じだし。


「中で待っててくれても良かったのに」


「だって図書館て苦手だし」


千里は苦笑いでこめかみを掻く。


同感。



「悪かったな、遅くなって」


「いや、いいよ」


千里はまだ足が悪いのか片方だけ松葉杖をついている状態。ギプスで固定された痛々しい足を庇いながら何とかベンチを立ち上がろうとして、あたしは手を差し出した。


千里は戸惑いながらまばたき。


「ほら」


あたしが急かすと


「いや……いいし」


千里はぱっと顔を逸らす。


「かっこつけてんなよ。バカ千里」


あたしは強引に千里の腕をとって


ぐい、と腕を引いた。


その勢いで千里が立ち上がる。引く力が強かったのか勢いが付き過ぎた。


「ぉわ!お前力強すぎだっ」


千里が思わず喚いて、そして次の瞬間息を呑んだ。


あたしもびっくりし過ぎて目を開いた。





あたしのすぐ近くに千里の顔が―――