千里と待ち合わせした図書館は表の大通りから二本ほど裏通りに入った閑静な住宅街の一角にあった。
近くに割りと大きな公園もあって、こうやって改めて見ると東京じゃないみたいだ。
白い半円形の大きな建物が図書館で、その周りを緑の木々が鬱陶しくない程度に囲っている。
ベンチも設置してあって、なかなか良い外観だ。
図書館なんて久しぶりだぜ。
あたしには一生縁のないもんだと思ってたがな。
その白いベンチの一つに千里が座っていて(暑いだろうに、中入れりゃいいのに)棒がついたアイスを舐めていた。
あたしを見つけると
「おせーよ」
と、苦笑い。いつも通りの千里を見て……何だかちょっと安心できた。
「ごめん、ごめん。来るまでに色々あってさ~」
あたしは千里の隣に腰掛け、千里の持っていたチョコアイスに勝手にかぶりついた。
「あ、うま♪」
「ちょっ!お前、勝手に食うなよ」
千里は怒ったけど
「いいじゃん。ケチケチすんなよこれぐらい。昔はおやつは全部半分こしてたろ?」
あたしは唇の端に付いたアイスを舌でペロリ。
「そうじゃなくて!……なんか…無駄に意識しちまうだろ…」
千里は頬を赤く染めて慌ててあたしから顔を逸らす。
ドキっ
そう言われてあたしの顔も熱くなった。
千里のこと男として意識してる、とかじゃなく……やっぱあたしたち完全には元に戻れないんだなぁと改めて実感したから。
千里は―――こないだのホットケーキパーティーで、新しい出会いもあってか「前を向く」みたいなこと言ってた。
それはそれでいいことだし、むしろそうあってほしい。
そう願ってたのに。
あたしの予想もしないタイミングで、予想もできないこと言われたら、やっぱり千里の中でまだケジメがついてないんだ…と気付く。
幸せになってほしいと願う一方で、千里の今の“幸せ”を叶えられない自分がいることを申し訳なく思う。
あたしの何気ない行動が、仕草が、千里を苦しめてる―――



