■ モデル!? ■


――――戒とキスをするのは、一体何度目だろう。


その度に、心臓が爆発しそうになるぐらいドキドキするけど、さっきのは比にならないぐらい。


腰の辺り一帯がじんわり甘い痺れをきたし、口から熱い息が漏れる。


顔も体も熱を持ったように熱くなって、つま先から優しい快感がせり上がってくる。


電車の窓ガラスに映った自分の姿を見て……


カーーーー!!!


またも赤面。顔がものすごく熱い。



あたし!


あたしじゃないみたい!!


あたしは恥ずかしさのあまり思わず両手で頬を包んだ。



でも


戒にもっとキスしてほしい、もっとぎゅっと強く抱きしめてほしい


そう思った。



あたしもしかして……すごくすごーく!淫乱なのかもしれない!!


そう考えると余計に顔が熱くなってくる。


叔父貴に熱烈片思いのときは考えたこともない感情が、戒のときは簡単に引き出される。





あたしの“女”の部分が、戒の“男”の部分に惹かれてる―――





そう気付いたら、自然に手はケータイのメールを打っていた。


『旅行』と単語を出すのはやっぱり恥ずかしかったけど、でも



戒と旅行―――行きたい。


そう思ったら作成したメールを送信する指に躊躇は無かった。


戒はバイト中だからすぐの返事を期待せず、あたしは目的の駅に降り立った。


「ヤッば!遅刻しそうだぜ」


ケータイのデジタル時計を見ながら走っていたから、前方不注意だ。


「ぶっ!」


誰かに派手にぶつかり、あたしは鼻の頭を押さえながらその人物を見上げた。


見知らぬ若い男だった。キャップ帽に黒縁メガネ。Tシャツにジーンズと言うラフないでたち。


その周りに重そうなカメラか何かの機材を抱えたむさくるしい男と、若い女の人が立っていて



「あ、ねぇ!お嬢ちゃん!!いいじゃない、あなた!♪」


女の人がすごく嬉しそうに顔を輝かせてあたしをじろじろ。



何だぁ?