「戒に用って何だ?あたしでよければ聞いておいてやるよ」
早くタクを追い出したい一心で言うと
「…いや、いいっす。また出直してきます…」
いつになく小さな声でタクが気まずそうに顔を背ける。
「何なんだよ、はっきりしろよ」
イライラしてあたしが腕を組みながら立ち上がると
タクは困ったように眉を寄せ、だけど次の瞬間目じりを僅かに吊り上げた。
それはほんの一瞬。
タクのこんな表情、はじめて見る。
目が真剣さを物語っていてあたしは何故だか一歩後退してた。
ここは戒のお部屋だ。何かあったら大声を出せば誰か駆けつけてくれる。
だけどタクがあたしに何かするわけない…って分かりきってる。
だからその心配は皆無で。
「何だよお前…真面目な顔しちゃってサ~」
バシバシとタクの肩を叩くも、タクはその手を掴んであたしに一歩近づいた。
今までにないほど距離をつめて、タクの下りた前髪の(いつもは立ててます^^)毛先まで見える位置で―――
…………
「てか…お前酒くさっっ!!!酔っ払ってんのか!そんな酒くさい顔であたしに近づくな!!」
あたしは何か分からないけどアルコールの臭いをプンプンさせてるタクから逃れるよう身をよじった。
近くに居るだけで酔いそうだぜ。
だけどタクはいつもなら離れていくのに
「お嬢―――……俺―――………」
タクはふいに(意外に)長い睫をそっと伏せた。
何―――……
そう聞きたかったけれど、それよりも早く本能が危険信号を察知した。
「離せよ!」
あたしはタクの腕を振り払い、逃げ出そうとしたが
「聞いてください!お嬢っ!!」
タクがあたしの手を再び掴み、
「やめろ!あたしに触ンな!」
そう叫んで振りほどこうとしたとき、
バランスを崩した。



