雪斗は少しだけ意外そうに目を開いて、それでもすぐに微笑を浮かべた。
「良く分かったな」
こんな曲弾いて唄まで歌って。戒だったら絶対選ばない曲だし。
ってことはこれはまた夢か。
寝転がったまま聞くと、
袴姿の雪斗は三味線を抱きかかえながらうっすらと微笑した。
「芥子は美しいが、その香りを一度でも知ると
その魔窟の香りから逃れることができない。
お前は俺にとって美しい桜ではなく
芥子の花だった」
「………」
あたしは口を閉ざした。
「冗談だよ。お前をクスリに例えるのは間違っているな」
クスリだよ。
お前にとって―――な。
まばたきもせず、雪斗の切なそうな顔を見上げる。
何故
どうして雪斗はあたしの夢に現れるんだろう。
「この時期だけだ。盆が近づいてるからな」
雪斗はあたしの考えを読んだのかうっすら笑って目を伏せる。
お盆―――
「でも……去年は現れなかったよ?その前も…」
「それはお前が俺から目を背けていたから。
今年は俺を受け入れ、前を向こうとしてくれているから」
受け入れるキッカケを作ってくれたのは―――戒だった。
雪斗の名前の一部になっている、まるで雪のように白くて細い指があたしの頬をそっと撫でた。
冷たい―――指先だった。
「お前が夢に現れたのも偶然じゃないんだろ?
前回、お前は白へびの存在を教えてくれた。
今度は芥子だ。何の意味がある」
あたしが聞くと、雪斗はうっすら微笑を浮かべて
「朔羅…芥子の花……オピウムがお前を
呼んでいる」
オピウム――――阿片。
阿片の原料は芥子の花の実だ。



