「味方につけたら……って…その“鏡”はあんたの敵になったんでしょう。だったら朔羅の味方をするに決まってるわ。


あんたそんなに余裕ぶっこいてていいの?」


「その存在はまだ龍崎 朔羅に肩入れするつもりはないらしい。何が目的か分からないが


どっちつかず、と言う状況だね。


それに


ネズミがうろちょろしてるから私も迂闊なことができない、と言うのが現状だ。


奴らは“鏡”よりタチが悪い。


鬱陶しい極まりない。






そろそろ



退治しようかと思うんだけど」



玄蛇はにっこり言って手の間接をボキボキ鳴らす。


「鏡はすでに二人殺している。


運がいいことに目障りなネズミもちょうど二匹だ。



鏡の中の私は同じ動きをするんだよ?」



退治―――…




それも二匹。



ネズミを殺すってこと―――……!?


「君の命令がくだらないと私は動けない。今の雇い主は君だからね」


これは―――



取り引きだ。



命の選択。


今、あたしには少なくとも二人分の運命が掛かっている。


ごくり……


喉を鳴らして玄蛇を見る。


『冗談だ』と言う言葉を期待して。


けれど玄蛇からその言葉を語られることはなかったし、言うつもりもないようだ。




覚悟を―――……決めなきゃならない。






あたしは“ネズミ”が誰なのかどんなやつなのか知らない。



だけど殺るか殺られるかの瀬戸際に、答えなんて決まっている。





ネズミを利用して恩を売っておく。




あたしは悪魔よりもっとタチの悪い殺し屋と手を組んだのだ。


腹を括るしかない。


元々あたしと関係ないし。


うまくいけば“鏡”が何なのか分かるかもしれない。





「いいわよ?その代わりうまくやりなさいよ」




腕を組んで玄蛇を見下ろすと


玄蛇は立て膝をついて恭しく頭を下げ





「御意。



我が君主」





好きだよ?




玄蛇の言葉が蘇る。



玄蛇がそのあとに続ける言葉を簡単に想像できた。






だってやっぱり君はワルい女だ。


響輔のために




響輔を守るために





君はどこまでも堕ちる。








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