「…じゃ、じゃぁ誰の仕業よ」
「知っているが君に教えるほど私はお人好しじゃない。
大体にして私はプロだ。
〝隠したい殺し”の場合、私は死体を残すようなことをしない。
龍崎 琢磨なら東京湾に沈めるだろうが、私はその方法好まない。そんなことしてたら東京湾が死体でいっぱいだ。いつか海が死体で陸になる」
笑えない冗談にあたしの頬はひきつった。
「私の場合はもっと合理的でかつ危なくない方法をとる。酸で溶かして骨も肉もドロドロさ。
あとは下水が流してくれるから跡形もない」
にっこりと微笑まれて、そのえげつない方法に吐き気をもよおした。
すぐ喉元まで出かかった胃液を何とか飲み込み、あたしはギリギリとナイフの柄を握った。
ナイフの側面にあたしの顔が映り、磨きこまれた銀製のナイフが部屋の照明を反射させた。
………
突如思い立ってあたしは玄蛇に気づかれないよう、そのナイフを握った手をそっとテーブルから下ろして膝の上でぎゅっと握った。
「響輔はあんたを疑ってるようよ?
濡れ衣着せられてそれで黙ってるつもり?あんたらしくないじゃん」
精一杯の強がりで玄蛇を挑発しようとするも
「あらぬ疑いを掛けられることは慣れてるさ。
今更言い訳はしない。
小さい頃……妹がイタズラで母親の口紅で部屋のカーテンに落書きをしたのだがね、それを私のせいにされたときからかな、どうやら私は見るからに怪しいらしい」
とまたもさらりとかわし笑顔でにっこり答える玄蛇。
「かっこつけちゃって。まぁ見るからに怪しいってとこは否定しないけど」
あたしはナイフの柄をぎゅっと握りテーブルの下へ…あたしの足元まで玄蛇の憎らしいほど長い脚が伸びている。
別に殺すつもりはない。
ただちょっと…脅すだけよ。
あたしだってただ命令をくだす女王様なんかじゃないわ。
何も知らずに響輔と言う王子さまに守られてるだけのお姫様じゃないわ。
ぐっと柄を握り、玄蛇が組んだ脚を組み替えるタイミングを見計らって―――
「ホントは悔しくて仕方ないんでしょう?
だからあたしに本当のことを言いたくてたまらないんじゃない?」
玄蛇の眉がぴくりと動いた。赤い目の端が妖しく光ったように見える。
「図星?あんたの周りは敵だらけだからね」
今
と言うタイミングで笑ってみせて、ナイフを振りかざしたときだった。



