響輔が
「何やっとんねん、俺」
と小さく独り言を漏らしながら頭を掻き、玄蛇は噴水のブロック塀から腰を上げた。
頭を掻きながら地下エントランスに向かう響輔と、こちらに向かいながら黒いコートのポケットに手を突っ込んだままの玄蛇がすれ違う。
その一瞬
玄蛇は口元にうっすら笑みを浮かべてあたしを挑発するかのよう薄気味悪い笑顔を浮かべ
あたしの方を見てきた。
ドキリ
として目をまばたいて、それでも響輔は何も気づかず
エントランスの方に向かっていくのを確認するとほっと胸を撫で下ろした。
玄蛇は鼻歌を歌いながらあたしとすれ違おうとする。
その瞬間
「ちょっと…!」
何かを言ってやりたかったが
「私を売ったら後悔するよ?」
玄蛇があたしのすぐ耳元まで顔を寄せて低く色っぽく囁く。
その声はあたしの脳を甘くしびれさせた。
嵐が来る。
「裏切りは死に値する。さぁ君か、君がお熱な響輔か―――
どちらが先に消されると思う?」
まるで愉しむように軽く言われてあたしの背中に何かいやなものがぞっとなぞった。
「きょっ…!」
響輔に何かしたら許さないから!と言う意味でスラリと細身の体を睨み上げると
「そのままにしていまたまえ。鷹雄 響輔に何か勘付かれる恐れがある。
私は君の部屋の前で待ってる。話はあとで」
玄蛇は目を合わせることもなくそっけなく言って玄関に向かってしまった。



