「じゃぁ何のつもりできたのよ。
あたしを心配するふりで近づいてきて、でも
あんたの中にあたしは
居ない。
利用したんでしょう?あたしのことを」
まっすぐに響輔を見つめて言うと響輔は虚をつかれたように目を開いた。
ドアマンも困惑したように…しかし聞いてないフリに徹して黙って顔を逸らしている。
「喧嘩したいんやったら今日だけはやめて。
そんな気分やあらへん」
響輔はそんざいに言って再び前を向こうとして
「喧嘩なんてしたくないし。
あたしはあんたと居れて嬉しかった。
それが素直な気持ちよ。
たとえあんたの目的が何であれ、あんたが居てくれるだけであたしはそれだけで良かった。
利用されたって知ってもいいし。
あたしは今日あんたが居てくれて救われた。一人の夜を過ごすよりもずっとずっと有意義だった。
でもあんたは?
あんたの悩みは誰が聞くの?」
「俺が悩んでるて?」
低く聞かれてあたしは顎を引いた。
「…ホントのところはどうなのか分かんない。ただ―――…」
言いかけたとき響輔はシャドウファントムからキーを引き抜きスタンドを立てることなくバイクから降り立った。
バランスを失ったシャドウファントムがぐらりと傾いて派手な音を立てて横倒しになっても響輔は気にした様子もなくあたしに近づいてくる。
キーをドアマンに放り投げて
「悪いんやけど、あのバイク地下エントランスに入れといて」
ドアマンは危うい手つきでそれを何とかキャッチすると
制服のインカムで何かを伝えて響輔に丁寧にお辞儀をし、やがて響輔のシャドウファントムを起こして言われた通り大人しくバイクを引いて行く。
か、帰らないの……?
「な、何よ……」
思わず身構えると
ふわり
響輔に抱き寄せられた。



