また名前をさりげなく呼んでくれた――――
あたしは
最後の最後の演技で相手役の男に響輔を重ねた。
響輔を想うことをやめようとしたら
何故だか胸が苦しくなった。
悲しくなった。
締め付けられるように痛い。
あたしはまだ
やめたくないよ。
あたしはママのようにならない。
だって自ら手放したらもう絶対手に入らない。
でも手放すことも〝愛”なの?
わかんないよ
ママ。
砂浜に指の先で意味もない落書きを描く。
見ようによっちゃハートにも取れるその絵は歪んでいた。
「らしくないって…
あたしを何だと思ってんのよ。そりゃ人間だし落ち込むときぐらいあるわよ」
でもこれがあたし。
それともこんなあたし響輔は嫌いだって言うかな。
だったら明るくしないとな…
ぼんやりと考えて砂にお絵かきしていると
キラリ
白い砂の中で何かが光った。
ガラスか貝殻の破片だろうか、その破片に響輔が手を伸ばすと
「星、見つけた」
砂をそっとすくって手のひらに小さな光のかけらを乗せてあたしに見せてくる。
響輔が星と例えたのは…
なんてことない、あたしの爪から剥がれ落ちたストーンの一部だった。
「何それ。それは星なんかじゃなくてただの石だよ」
「そっかな、俺には星に見えるけど?
たくさんの砂に埋もれたたった一つの星。
今は砂に埋もれて見向きもされん石やけど、いずれその石を誰かが見つけて
その石がダイヤの原石やったって気づくんや。
あんたはこの光や
スターや」
きゅっ
響輔がその輝きを大事そうに手のひらに握り、あたしは目をまばたいた。



