あたしは響輔からもらった缶コーヒに一口口を付けた。
それは無糖でほろ苦い。
隣で響輔も同じようにあたしのミルクティーに口を付け
「甘…」
と顔をしかめている。
あ
間接キス。
まるで恋を知ったばかりの少女のようにあたしの心は踊る。
キスだってはじめてじゃないし、その先も知ってる。
たくさんの男と経験して、行為自体何の感情も抱かなかったのに今
あたしはほんの少しの仕草でドキドキしている。
キス
したいな。
響輔と。
そんなことを考えて俯いていると
「女優ってのも色々大変なんやね。きれいな服着て化粧して煌びやかな世界やと思っとったけど」
響輔が後ろに手をついてあぐらをかき遠くを見やっていた。
三時間も現場にいたのだ。大体のことは分かってるのだろう。
「…煌びやかな世界…そうでもないよ。名前が売れてるってだけで大した演技力もなけりゃ可愛くもないアイドルの方が使われるとかさ」
「同感やな。あれじゃ幼稚園のお遊戯会とそう変わらへんで。
監督かて期待してへんのとちゃう?何や厳しそうな人やったしな」
「厳しいわよ。『鬼か!』って思ったことが数え切れないぐらい」
「でも
だからこそあんたはあの監督に期待されてたんちゃう?」
「期待―――…さぁ実際はどうだかわかんない」
俯くと
「らしくないやん。いつでも自信に満ちあふれた
一結はどこへ行ったん?」
響輔が渇いた笑い声を上げて上体を起こすと背を丸めて前で手を組んだ。



