「あの人は…『交換して』言わへんよ」
響輔はコーヒーの缶に口を付けながら遠くの方…海の水平線のもっとずっと遠くを見つめながらぽつりと言った。
「き、聞き分けのいい子って言いたいの?それとも優しいって??」
またも可愛くないあたしは、どんどん嫌な女へとなっていく。
これじゃさっきのどブスアイドルと代わらない。
「…いや。あの人は何も言わず…
強引に奪っていく」
至極真面目に言われて、あたしは目をぱちぱち。
「『あたしのものはあたしのもの。キョウスケのものもあたしのもの』みたいな。
我が儘お嬢様って言うより、ジャイアンやな。
俺はシズカちゃんみたいなのが好みやったのに」
ぷっ
あたしは思わず吹き出して
「何それ。何でそんなジャイアンを好きなのよ」
と笑った。
「おもろいやろ?周りにはおらへんタイプやったから」
「あんたもあたしの周りにはいないタイプだわ。
あたしを―――欲しがらない男なんてはじめて。
体や気持ちを求めてこないのに、ただ近くにいてくれる。
そんなのはじめて」
ミルクティーの缶を手で包んで俯いていると、響輔の手が伸びてきてあたしのミルクティーを奪っていった。
代わりに
「ん」
短く言ってあたしに缶コーヒーを押し付けてくる。
「交換
するんやろ?」
またそんな…
その気もないのに優しくして―――
響輔の優しさは
残酷だ。
でもそれが響輔だ。



