あたしはここではじめて響輔の顔をちゃんと見た。
キャップを取り去った響輔の髪の先は毛先がぴょんぴょん跳ねていて、寝起きみたいで何か可愛いし。
響輔が貸してくれたシャツの袖で目元をそっと拭うと
「あ、あんたの話と言うの付き合ってあげてもいいわよ?」
ああ、また可愛くないあたしが顔を出す。
「や、無理せんでもええよ。
電話でもええし」
電話なんて―――いや。
今すれ違ったらまた今度いつ会えるか分かんないし。
「今日はもう撮影終わりだし、明日の夕方まで空いてるの」
「あーじゃぁ…」
響輔が言いかけたときだった。
「youさんお疲れ様で~す!!☆」
聞いたことのない黄色い声で手をぶんぶん振ってあの性格どブスのアイドルがにこやかに走ってくる。
はぁ?何の風の吹き回し?
あたしは目を点。
「youさんのお知り合いですか~?」
にこにこ響輔を目配せして
ああ、そゆうことね。
今までキャップをかぶってたからわからなかったけど、外してアイドルさまのイケメンセンサーが働いたってわけね。
まるでハイエナみたいな女ね。
「ええ、まぁ」
あたしが曖昧に返すと
「じゃぁこれから打ち上げしませんかぁ?youさんとはこの回でお別れだし。
youさんはクランクアップまで残れないから。三人で♪…」
ムカツク女。
ブスブスどブス。
その女の言葉を最後まで聞かずして
「一結」
響輔がぐいとあたしの手を引いた。



