それからあたしはエリナのことを気にしながらも何とかバイトをこなし、終わりの時間になるとロッカールームに戻った。
「よ!」
一時間前にあがっていった戒はてっきり帰ったと思っていたのに、どうやらあたしが終わるのを待っててくれたみたい。
「鴇田の脅しだけじゃ足りなかったみてぇだな。火に油を注いだみてぇだ」
戒はため息をついてロッカーにもたれかかる。
「そうだな。火に油…どころかガソリンだぜ。
もっとこう、あいつが危険な男だって知ったら身を引くに違いないが」
あたしもため息。
「まぁ実際危険だよな鴇田は。あんな淫行コーチ何も思わず射殺だ」
「その危険さを何とか身に覚えさせないとなー」
「覚えされるって?ヤクザやってバラすのが一番やけど、信じるかな?」
「紋を見せりゃ一発だろ」
「代紋を通行証代わりにすんなよ……」
戒は益々呆れたように額に手をやり言いかけたが
「通行証じゃなく、印籠だ。これが目に入らぬかー!!って」
言って、あたしと戒は目を合わせた。
「それ、いけるんじゃね!」
珍しく戒があたしのアイデアに乗ってきた。
「人数はなるべく多い方がいいよな。鴇田組の数人貸してもらうか」
あたしが指を折ってざっと計算していると
「俺もキョウスケも協力する」
戒の発言にあたしは目をまばたいた。