「エリナちゃん、龍崎くん?休憩時間はとっくに過ぎてるわよ」


おネエ店長が咎めるように顔を出して、でもあたしたちの光景を見て


「ど、どうしたの!」と顔色を変えた。


「お客さんにイヤなこと言われた?それとも従業員に意地悪された!?」


おネエ店長は素早くエリナの足元に屈みこみ、エリナはしゃくりあげながらもゆるゆると首を横に振った。


おネエ店長…おネエ入ってるけど、女の子には優しいんだよな。


ありがてぇけど。


「実は…タチの悪い客に目ぇ付けられて、それでそいつにストーカーみたいに尾け狙われてるみたいなんスよ」


戒がおおまかなことを説明して、まぁあながち外れてはないけど。


「ちょっと興奮してるみたいね。


水飲んで、落ち着いたら私がおうちまで送っていってあげるから、


二三日、ゆっくり休んだ方がいいわ」


おネエ店長はエリナの背中を撫で撫で。


本当のお姉さん(注:お兄さんです)みたいに心配そうにエリナを覗き込み、


「一人にしない方がいいのかも。


落ち着くまで朔羅ちゃん傍についててあげて」


おネエ店長の配慮であたしがエリナの傍に。


戒は持ち場に戻っていって、エリナが落ち着いたのを見計らっておネエ店長はエリナを店長の車で送ってもらうことになった。


「ごめんね、サクラ。龍崎くんにも迷惑かけて」


車に乗り込むときにエリナは憔悴しきった顔で、それでも何とか謝ってくる。


「気にするなよ。あたしと戒で何とか良い方法考えるからさっ」


気休めだろうが、この言葉はエリナに安心を与えたようで


「ごめんね、ありがとう」


エリナは無理やり笑って、車は遠ざかっていった。