「怖いって戒の顔が…?まぁこいつ黙ってると怖いぐらい美少年だしな。


怒るとリアルに顔がこえぇ」


あたしが慰めるように言うと


「おい!(怒)」戒が怒り出し


「違うの……」エリナは否定。


なんだ…違うのかよ。



―――


「ストーカーがエスカレート!!?」


エリナの話に寄ると、エリナのケータイに淫行コーチからほぼ三分置きに電話が掛かってくるし、家に帰ったあとも家の外でじっとエリナの部屋を見上げているらしい。


さらにメールも。


“エリナ、俺のエリナ。


許さない、許さない!俺以外の男と付き合うなんて許さない!”


と、ぎっちり『許さない』と言う文字を見て、あたしも怖くなった。


前よりも執着心がより一層増している気がする。


「鴇田に頼んだのが逆効果だったか。


ガールズバーの勤怠記録は処分したけど、これじゃ根本的な問題は解決されねぇな」


戒は大きくため息を吐き、


「あいつ、奥さん居るんだろ?だったら全部バラすって脅せば」


あたしが提案したが、


「逆効果だ。この状態なら離婚してまで新垣さんとどうにかなりたいだろうし、


そもそもこの件が公になったら新垣さんがあの高校に居られなくなる」


戒は冷静に判断し、その言葉にエリナは益々顔を青くした。


「あたし……親に全部話して引っ越す」


エリナが泣き声で呟き、


「待てよ。引っ越したってあいついつか探し出すよ?」


あたしが説得するも、エリナはよっぽど怖かったのか


「引っ越す!もうここに居たくない!!


怖いの」


わっ!


エリナは大声を挙げて顔を覆い、背中を丸めた。


その背中が小刻みに震えていて、あたしはそっとその背中を撫でた。


「大丈夫、大丈夫だから……あたしたちがついてるよ。


だから、冷静になろう。ね…」


あたしはそう遠い過去じゃないことを思い出した。





雪斗のこと―――





あたしには誰も話せる人が居なかった。



ただ一人―――耐えるしかなかった。


だからあの結果を招いた。




エリナには、あたしのような罪を背負ってほしくない。





絶対に、あたしみたいになってほしくない。






だからあたしがあんたを助けてあげる。