リコにとったヒドイ態度のことをあれこれ責めたかったけれど、キョウスケのいつになく緊張を帯びたその顔を見て、その気も失せた。


「見てください。


お嬢が龍崎会長のPCに入れ込んでくれた監視システムのウィルスで、彼らが俺たちの親父たちを東京に呼んだ本当の意味が分かりました」


え―――……?


キョウスケは慌しくノートPCの蓋を開くと、


そこには鈴音姐さんの顔が映し出された。


上からのアングルだろうか、一見何かの監視カメラの映像のように見えた。


「ここ……龍崎 琢磨がおかんたちを呼び出したホテルや。


ほら、ここの絨毯のロゴ。ホテルの名前が入ってる」


戒が指差し、確かに指差された場所はいかにも高級そうな茶色の絨毯の地に、緑色でロゴが入っていた。


あたしたちが泊まったホテル―――


「そうです。


そしてこれを見てください」


キョウスケがキーボードで何かを打ち込むと、画面が切り変わり鈴音姐さんの姿が、今度は違うアングルの違う風景の中浮かび上がった。


どこかの駅だろうか。人がたくさん溢れている。


「一見、鈴音姐さんがこの道を通っているように見えますが、実は


まったくの別人」


キョウスケの言っている意味が分からず、あたしと戒は顔を合わせた。


「説明するより見せるのが早いですね」


キョウスケはまたもキーボードに指を滑らせ、


カタカタカタ…


すぐに画面が切り替わり、さっきと同じ風景、同じアングルで―――しかし、あたしの全然知らない別人の顔が映し出され、あたしは目を開いた。





「俺の親父と……恐らく鴇田さんですね。彼らが手を組んで衛星をハッキングしたんです。


顔認証システムを細工して、本人はそこに居ないのにそこに存在しているように見せる。



彼らの本来の目的はこれだったんです。


ホテルのあらゆる監視カメラにデータを記憶させ、





誰でも彼らの影武者に塗り替えることができる」