ふわりと、あたしの肩を戒の両腕に抱きしめられて


戒の柔軟剤の香り、戒の体温―――背中いっぱいに感じて、ドキリ…心臓が大きく飛び跳ねた。


「傷つけた…って言う自覚はあるんだ…」


ボウルの中のひき肉と調味料を混ぜながら思わず意地悪を言っちまった。


「まぁな。俺、あんま女と言い合いにならないし、例え喧嘩になっても俺が折れる」


なんか意外……



「だって女ってちょっとキツく言うと泣くじゃん?俺、泣かれるとどうすればいいのか分からなくなるし」


「あたしと前、言い合いになったときは全く折れなかったけどな。


てことはあたしもリコも女扱いしてないってことか??」


根に持つタイプだと思われたらイヤだけど、この状況が恥ずかしくてわざと冗談ぽく笑った。





「その逆や。



大切やから……好きやからこそ―――



自分の気持ちに嘘はつきたない」




きゅっとあたしを抱きしめる腕に力が入り、戒はくすぐるような心地よい関西弁であたしの耳元でそっと囁く。


「川上のことは…俺…ほんまもんの親友やと思うてる。


朔羅の親友やからとか、だけやなく……





俺自身―――ダチとしてあいつを好きやねん。





親友やったらぶつかるときぐらいあるやろ?俺はそうやって響輔とも何回もぶつかってきた。



でもそうやって絆深めるもんちゃう?



ここで壊れるんやったら、それは偽もんや」







だから戒は本気でぶつかった―――……?



エリナが言ってたことの本当の意味が―――



ようやく分かった気がした。