いつまでも一人で怒ってたってしょうがないし、あたしも大人にならなきゃなー…


鮮魚コーナーで


「鰆はないけど鮭ならあるよ?鮭の西京焼きは??」


とパックを手に取ると、


「うん、俺も好き」


とまたもにこにこ笑顔がかえってくる。


「結局お前が好きなもんじゃねぇかよ。お前って嫌いな食いもんないの?」


「嫌いなもん?うーん…まぁ納豆ぐれぇだな」


納豆…??


はじめて聞いたかも。


「良いこと聞いた♪今日は納豆もつけようぜ!」


嬉々として納豆コーナーに向かうおうとすると、本気で戒に手を引いて止められた。


「マジでやめて」


戒は真剣に言ってあたしの手を握り、引き寄せる。


あ……


今日はじめて…手を繋いだ。


ちょっとだけドキリとして目をまばたくと、戒は慌てて手を離し頭の後ろに手をやって視線を泳がせる。


「関西人だからしゃーねーだろ?」


手が離れていってしまって、何だか凄く寂しい。


今、あたしが素直になれなかったら……今日はもうずっと手を繋げないままギクシャクして終わっちゃうのだろうか。


そんなのヤダ。





「じゃー納豆はやめる。代わりにお前が食いたいもん作るから一緒に選ぼう」





あたしは戒の手を握って、無理やり手を繋ぐと戒はびっくりしたように目をまばたいたものの、


すぐにまた笑顔を浮かべてきゅっとあたしの手を力強く握り返してきた。


あたしの心臓もきゅっと音を立てる。


嬉しいような恥ずかしいような、複雑だけどピンク色をしたふわふわした感じ。


「じゃぁこないだお前が作ってくれたヤツ。豆腐とエビのおぼろ煮??中華風ですっげぇうまかった♪」


「ヤダ。エビは今日高いし、あれ時間掛かるんだよ。面倒くせぇ」


「何だよ、じゃぁ何で聞くんだよ」


戒は不服そうだったが、


「ひき肉が安いから、今日はハンバーグで決まり」


あたしが精肉コーナーに向かおうとすると、


「マジ……作ってくれんの?」


「時間が掛かるからお前も手伝えよ?」


何だか恥ずかしくて俯きながら何とか言うと、






「うん」






戒はまたもご機嫌に頷いて、あたしの手をさらに強く握り、距離もさらに縮めた。




素直になるって―――実はすごく簡単で、でも一番難しいことなのかもね。