■ 仲直り!? ■


キリさんには―――いつも助けてもらった。


戒が浮気したかも、って悩んでたときも親身になって相談に乗ってくれた。


あたしはやっぱり…あの人が平気で人を殺せるような人じゃないと思いたいよ。



あたしはキリさんから貰った二千円と伝票を握ってレジに近づいた。


「お会計入りまーす…」


気マヅさから声がちっさくなったけれど


「おう」


戒は気にした様子もなく伝票を受け取る。


レジ打ちで数字を入力する戒はやっぱりいつも通りで


キリさん……あの言葉、戒に言ってやってよ。とちょっと思ったり。


でも


素直になる―――か。


後悔もできない日を迎える前に。


「きょ、今日さ。エリナを送ったあと夕食の買い物しにスーパー行くけど


お前も一緒に行く?」


「んー……」


戒は伝票を見つめながら数字を打っていたが、


「え?」


慌てて顔を上げた。


「だから、スーパー行こうぜ。デートって言ったらあんま色気ないけど。


それじゃな」


完璧に素直になり切れないあたしは戒の返事も聞かずにそれだけ言うと慌てて厨房に向かった。





「うん!」






戒が背後から声をかけてきて、あたしは思わず振り返った。


うん、てガキの返事じゃあるまいし。


思わずそう言おうとしてあたしは表情を変な風に固まらせた。


だって戒は



すっげぇ嬉しそうに太陽みたいな笑顔で






「ぜってぇ行く!」






って言ったから。




その笑顔、ズルいよ。


だってたかがスーパーだよ??



そんなに嬉しそうにされたら、全部許せちゃうよ。


どんなわだかまりも消えて、どんなにすれ違ってできた距離だってあっという間に詰められる。


顔が熱くなるのを感じて、あたしは慌てて顔を逸らし


「じゃ、あとで」


それだけ言うと、厨房に向かった。