そのまなざしとその仕草を見てあたしはゾゾゾと鳥肌を浮かべたが、


「……え…?」


エリナが顔を真っ赤にさせてうっとりした目をまばたき、


何故かすぐ隣でおネエ店長も目がハート。


……だったが、


「ちょっとぉ、エリナちゃん!薬丸さんは私が先に目をつけたんだからね!」


とすぐに目を吊り上げる店長。


先、後って問題より、それ以前の問題だ。


店長、いい歳した男が女子高生相手に張り合ってンなよ。


心の中で呆れていたが、鴇田にはその会話が聞こえていなかったようで


「悪かったと思ってるよ。


今日はお前の行きたがってた店予約したから、これから行こう」


「あ…あの…」


エリナが何かを言いかける前に


鴇田は淫行コーチの方を振り返り、




「お前か?俺の女を尾け回してるってヤツぁ」




鴇田はまるで射るような視線で淫行コーチを睨みつけ、それだけでビビっちまったように淫行コーチは後ずさり。


「可愛そうに。こんなに震えて」


鴇田は淫行コーチを見る視線から、視線を和らげまたもそっとエリナの髪を撫でる。


震えてンのはお前がドスのある声でコーチを威嚇してるからだよ。


もしくは“優しい鴇田”に気持ち悪過ぎて…ってそれはあたしと戒だけか。


戒も見慣れない鴇田の様子にマジで鳥肌が浮かんでいるみたいで、ぞっと顔を青くさせている。


「安心しろ。俺がついてる」


そう言うとエリナは顔を赤くしたまま、こくこくと慌てて頷く。



「あの……あんたは…?」


淫行コーチがビビりながらも何とか鴇田に聞くと




「あ゛ぁ?まだ居たンかよ」





これまたドスを含んだ声で一喝して、


「い、いえ!何でもありません!」


淫行コーチはアイスコーヒーも受け取らず慌てて店を立ち去った。