■ ヤクマルさん!? ■


鴇田は仕事中抜け出してきたのか、いつもの細身のスーツで髪もきちんとセットしてある。


革靴がテラコッタの床に響く音ですら、迫力を感じ


「あ……その節は、ケーキごちそうさまでした!」


と、いつかのショッピングモールで叔父貴と鴇田と会っちまったときの礼を慌てて言い出すキモ金髪。


キモ金髪は緊張した様子でカウンターの前から退き、鴇田はキモ金髪を訝しむように目を細め


「ああ、あのときの…」


と思い出したようだ。


「その節はどーも」


颯爽と手を挙げると、カウンターに肘をついた。


キモ金髪なんてまるで目に入ってないような仕草だ。


まぁ実際入ってねぇんだろうけどよ。




「よぉエリナ。迎えに来たぜ?



今日はもうあがる予定だったろ?」





鴇田に言われてエリナは


「え…?え??」と戸惑いを隠せない様子。


「話合わせておけ」


あたしがエリナに耳打ちするとエリナはぎこちなく頷いた。




「連絡しなくてごめんな、寂しかったか?」





鴇田はいつになく切ないまなざしでエリナを見つめ、エリナの髪をそっと撫でる。