別にキモ金髪のことどう言われようと知ったこっちゃないけど、


何でてめぇに付き合う人間まで指図されなきゃなんねんだ!


お前、何様だっ!!


あたしの怒りは爆発寸前。喉元まで出掛かった言葉を何とか飲み込んでいると、



これには言われたキモ金髪がカッチーンときた様子で


「おい、おっさん」


いつかのヤバい目で淫行コーチを睨みつけ、今にも胸倉を掴みそうな勢いだ。


「進藤」


それをたったの一言、迫力のある声で制したのは




戒だった。




「やめろ、ここで騒ぎを起こすんじゃねぇ」


キモ金髪の振り上げた拳を掴み、ぐいと力強く押し戻す。


「だけど兄貴……」


まだごちゃごちゃ言っているキモ金髪に


「ここは店だ」


とこれまた低い声で一喝すると、キモ金髪野郎は戒に言われて大人しくなった。


どうやら舎弟と名乗るだけの心得はあるらしい。


成長したな、お前も。





「あ…あの!こうゆうことはもうやめてください!


あた…あたし!付き合ってる人がいますので」




エリナも成長したようで、逃げ惑うのをやめたみたいだ。


震えているが何とか淫行コーチの目を見てしっかりと言い切った。



エリナの様子がおかしいことに気づいたのか、おネエ店長が厨房から現れ、


「どうしたの?お客様とトラブル」


とあたしたちを怪訝そうに眺めている。


淫行コーチはただただエリナに言われたことがショックだったのか、目を開いてエリナを凝視し、


やがて数秒の後


「何か勘違いしてるかもしれないけど…」と言い訳口調でもごもごと答える。


「お客様、当店の従業員に迷惑行為をなされるようでしたら退店していただくこともございます」


戒がわざとバカ丁寧に言って出入り口を目配せ。


「迷惑行為なんてそんなつもりじゃ…私はただ元教え子に会いにきただけだよ」


とまたも言い訳。


心外そうに目を吊り上げている。


粘っこくストーカーしてるヤツだからな、そう簡単には引き下がらないみたいだ。


店の客たちもちょっと異様な雰囲気にざわざわしだした。


どうするべきか―――


エリナを危険な目に遭わせるわけにはいかないし、なんといってもここは店だ。


そんなことを考えていると



またもドアベルがなって男がひとり入店してきた。






その入ってきた男を見て―――




あたしと戒、そしてキモ金髪は目を開いて止まった。


唯一


「薬丸さん!?♪」と店長の顔だけが華やぐ。


そう、入ってきたのは







鴇田だった。