「情報どうも。でもこれ以上は俺も教えられません。


あなたもまだ隠していることがたくさんありそうですからね」


キョウスケは無表情に言ってパソコンを鞄に仕舞いいれると、


「帰ります。今だったらお嬢も戒さんもバイトに出かけてるはずなので」


そう言ってさっさと席を立つ。


結局俺はS…スネークが動き出した、と言う情報をキョウスケに与えただけでこっちとしては何の助けにもならなかった。


骨折り損だ。


ぬるくなったコーヒーを飲んでいると、黙って立ち去ろうとしていたキョウスケが五百円玉一枚をテーブルに置いて





「一つだけヒントを。


今後、事故には十分気をつけてください」





たった一言だけ無表情に呟いた。


「事故―――……」


それはつい最近、スポーツカーと衝突した事故を指しているのか。


“事故”と言えばそれぐらいしか思い当たらない。


それがヒント―――


スネークもあのときの事故をきっかけに気付いたと言うのか。


キョウスケは意味深に少しだけ笑って、今度こそ立ち止まることなく店の外へと立ち去っていった。






あの事故で―――



命は助かった。死神は俺の魂を必要としていなかった。


事故直後は、何度も手のひらを見てそう思ったが、


死神はまだ俺に微笑みかけている。


手招きしている。



青龍会もろとも―――引きずりこむつもりか。


会長のお命どころか、これからの存続だって危うい。


俺は手のひらをぐっと握ると、拳を震わせた。




俺は命以上に厄介なものを、あの瞬間失ってしまったのだ。





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