手紙は白いシンプルなもので、あて先も何も書かれていない。


誰かが直接投函したのだろうか、俺は慎重な手つきでその手紙の封を切ると


中から古い……古い手紙と、まだ真新しい便箋が出てきた。


その古い手紙は月日の流れを物語るかのようにわずかに茶色く変色していて、手書きの文字もだいぶ薄くなっている。


だが



その古文書のような手紙を目に入れて、俺はその場で一人時を止めたように固まった。





見覚えがある―――





レベルじゃなく、それは俺が十七年前に自分宛てに送られ、自分自身が受け取ったものだから。


慌てて同封されている手紙を取り出し、その白い紙には


“鴇田 翔 様


あなたの秘密”とはじまっていて、俺はその真新しい紙をぎゅっと握った。



“まさかあなたの秘密があの場所に眠っていたとは知らず、手違いで掘り起こしてしまいました。


あなたは忘れたい過去かと思うかもしれませんが、この手紙が日の光を見たのもまた運命だと思い


あなたが事実と向き合えることを私は願っています。


勘違いなさっては困るのですが、これは強請ではありません。


いかなる場合でも内容は公開いたしませんので、ご安心ください。




追伸


朝のニュースはもうご覧になられましたか?


ご覧になられていないのなら、すぐに確認なさってください。


私の足跡を残しておきましたので。



     S”



俺は手紙を握ったままリビングに引き返した。


慌しくテレビを点けると


「なぁに?騒々しい。お客さんでも来た?」


キリが大きなあくびをかみ殺しながらのんびりと寝室から顔を出した。