「ないない!ぜってぇない!!」



自分の寝言で目が覚めた。


そう叫びながら飛び起きると、ぼんやりした視界に見慣れない天井が映った。


ここ……どこ…?


きょろきょろと辺りを見渡すと、ツインルームのもう一つのベッドで戒がこっちを向きながら枕を抱きしめて心地よさそうに眠っている。


戒……相変わらず色っぽい寝顔してんな。


てか、何で戒がここに…?


ぼんやりした頭の中で必死に思い出すと、


ああ、そうだった…昨日戒とキョウスケがこの部屋に来てくれたんだ。


キリさんも…


そう思い出してすぐ隣を見たけれど、一緒に横たわっていたキリさんの姿は無く、


代わりにソファで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいたのは




鴇田




だった。



パサッ


新聞がこすれる音がして鴇田が振り返った。


「お目覚めですか?随分派手な寝言でしたが」


鴇田――――…何でここに?


また夢…かと思ったが目をこすってもその様子は消えない。


夢…じゃない。


てかこいつ、いつの間に来たんだ??


夢で見た鴇田とは違って、相変わらず無表情で…いっそ冷たく見える。


でも怒ってるわけではなく、こいつはいつもこんな風だ。


てかこいつがあたしの親父とかやっぱ考えられないよ。


だって鴇田だぜ?こいつと血が繋がってると仮定するだけで、ぞぞぞと鳥肌が浮かぶ。


「何でお前が?キリさんは…?」


「キリは違う部屋で仮眠中です。私と交代しました」


鴇田は読んでいた新聞を閉じ、


「朝食を召し上がりますか?」


と言って立ち上がった。