「まぁ俺がその男だったら名乗れないってのも分かりますがね。


男の犯した罪は大罪だ。その彼女もまた同罪。


組織トップの…婚約者が居る娘に手を出し、彼女は夫を裏切っていた。


彼女の娘も家の人たちもみんなその亡くなった夫の子だと思い込んでいるわけでしょう?


今更事実を言われても混乱するだけですよ。





知らない方が幸せなことも―――あるんです」





キョウスケが感情のない言葉で淡々と言い放ち、


そんなもんかぁ??とあたしは首を捻った。


「てかおめぇさっきから鋭いな。作家になれるんじゃね?」


冗談半分に笑いながらキョウスケを見ると、





「単に冴えてるだけですよ」





キョウスケはそっけなく言って、顔を逸らす。


「それで?その話の続きはどうなったんですか?」


キリさんが聞いて、


「その後何年かは平和に暮らしていましたが、最近になって最初に結ばれた女性の産み落とした娘が彼の元をたずねて来ました。


彼女は自分の母親を病気で亡くなったこと、母親が亡くなったのは父親のせいだと、彼に攻めたてました」


「ぅっわ、ドロドロ~。昔にまいた、まさに“種”が今頃そうなるなんてなー」


戒は口元に手をやり


お前うまいこと言うな、とちょっと心の中で同意しちゃったりして。


「愛した人の娘だと思っても、彼はいきなり現れた、成人近くまで成長したその娘を自分の娘だとは受け入れがたかったのですが、


いったんは彼女を手元に引き取り、折り合いの悪い親子はまた生活を共にするのでした。


おしまい☆」



…………




「ちょっと待てよ!そこで『おしまい』とかあるか!


お前、もうちょっと考えろ!!




もう一人の女の娘はどうなっちまったんだよ!!」