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「鎮静剤です。少しチクっとするかもしれませんが、我慢してくださいね。ふふっ」


ベッドに横たわった会長の腕に注射器の針を刺しながら衛は言葉とは反対に、にこにこ。


「ガキじゃねぇんだし、注射ぐらいでビビるか…」


会長は横たわったまま悪態をついたが、


「痛って!!衛!お前、もうちょっと丁寧にやれ!」


「だから言ったのに」


衛は会長の喚き声にも苦笑い。


我が兄貴だが、感心するよ。お前は猛獣使いか、と突っ込みたくなる。


「それにしても…派手にやりましたね。強盗…?龍崎会長のお部屋に強盗とは犯人も相当つわものですね」


衛は注射器をしまいながら辺りをきょろきょろ。


まぁ説明をするのも面倒だから強盗の仕業にしておこう。


「これで少し痛みも落ち着きますよ。とりあえずは眠ってください」


衛は会長に掛け布団を掛け、にこにこ。


「医者らしいこと言いやがって…」


会長は枕の位置を調整しながら衛を見上げる。


「医者らしいじゃなくて、こー見えて医者なんですよ。ふふっ。


ついでに顔の傷の手当も。そのままだとハクがあり過ぎてみんな怖がってしまいますよ」


「勝手にしろ」


会長はふてくされたように顔を背けて枕に顔を埋めた。


「だから痛ぇって!お前っ、もっと丁寧にやれ!」