「ご無理をなさらず」


俺が会長の両腕をとって支えベッドまで連れて行った。


彼が暴れて引き裂かれたクッションから白い羽毛があちこち飛び出て、ところどころ赤い血の痕が落ちている。


会長はその一部赤く染まった羽を手ですくい、




「―――お前は鴇だ。


この白い羽のように、美しい羽を広げて自由に飛び回る鴇。



だが、俺の元から飛び立つのなら今のうちだぞ?




このままだと一生俺の飼い殺しだ。



俺と共にいると、片翼を失い





いつか飛べなくなる」





会長がどんな表情をして何を思って言ったのか分からなかった。


二十七年間仕えてきて、機嫌の善し悪しはもちろん、大抵のことなら考えていることが分かるって言うのに。


彼の…精巧に作られた美しい彫刻のような横顔からは




何も読み取れなかった。