出て行け…


その言葉にビクリと大きく肩が震えて、あたしの足は床に吸いつけられたように一歩も動けない。


「あんただって隠し事してるだろ?


騙し合いはお互い様だ」


戒が吐き捨てるように言ったけど、



「俺は一度だって朔羅の気持ちを踏みにじって利用して、朔羅を傷つけたことはない。



戒、お前も。俺の部屋に朔羅をのこのこやってこうなることが予想できなかったのか!



朔羅が大事ならそう簡単に手放すようなことするんじゃねぇ」



「叔父貴!あたしが…」


言いかけたが、キョウスケがあたしの手を引きゆるゆると首を振った。


「会長、興奮されるとお体に障ります。虎間、お嬢とキョウスケを連れて出ろ。


キリ、お前は会長のお傍に。私が彼らを部屋まで送り届ける」



鴇田はてきぱきと指示して、キリさんが困ったように部屋に入ってきたが、


「いい、お前はここに居ろ!朔羅たちのことはキリに任せろ」


叔父貴はまたも一喝して、鴇田は


「お嬢たちを頼む」キリさんに頷きかけスーツの上着を脱いだ。


「行きましょう。今はそっとしておいた方がいいみたいです」


キリさんは少し同情気味な視線で無理やり苦笑を浮かべて鴇田から上着を受け取り、それをあたしの肩にそっと掛けながら外を促した。


あたしが叔父貴の気持ちを利用して傷つけたのだったら






「出て行け」








あの言葉は“代償”としてあたしにかえってきたのかな。






このときあたしは叔父貴の本心をちっとも知らなくて





あたしが考えるよりずっと深く





あなたは傷ついて、たくさんたくさん血を流していたんだね。








ごめんね、










叔父貴。