ギクリ


一瞬顔が変な風に固まった。


も…もしかしてあたしが喋ってたこと聞こえてた!?


ドキンドキン…と心臓が鳴り思わずぎゅっと胸元を押さえる。


「ど、どうしたの…?」


思わず聞くと、


「遅いからどうしたか、と。冷蔵庫の中のものが気に入らんようだったらルームサービスでも取るか?」


叔父貴はあたしの不審な行動を疑問に思った様子を見せない。


背中に何かを隠し持っているようで、真剣な目であたしを見下ろしていた。


セットを崩した前髪が無造作に乱れていて、あまり見慣れない姿にドキリ…とする。


「何飲むか悩んでた……


ところで…な、何隠してんのさ!」


あたしは冗談ぽく笑って叔父貴の後ろを覗き込もうとしたけど、叔父貴はさっと移動してまたも背中で何かを隠す。


「ま…まさかハジキとかじゃねぇだろうな…」


この状況ならあり得るし、いきなり向けられたどーしよ!


『大丈夫だ、あいつがお前にハジキを向けることはない。いつも通りに』


戒の声がイヤホンから聞こえてきたけどー…


いつも通りって。


「ハジキが良かったか?」


からかうように低く言われて、あたしはむっと唇を尖らせた。いつも通りっちゃこれだしな。


でも


叔父貴の声もいつも通りで優しく耳の奥をくすぐる。


何だか昔に戻れたみたいで、あたしもいつになく素直になった。


「違うけどぉ」


ちょっとむくれてアップルジュースのふたを外そうとすると、


バサっ





叔父貴は突如目の前に大きな赤い薔薇の花束を取り出した。