「イヤホンは髪で隠れる。


マイクも小さなものだし、ポケットに忍ばせておけば大丈夫。


マイクのスイッチは切るなよ?



危なくなったら、パソコンは諦める。





お前の身の安全が最優先だ」







本当は行かせたくない。




戒の琥珀色の瞳がゆらゆら揺らいでいて、そう語っているように思えた。


「大丈夫だよ、


だってお前らがついててくれるから…」


あたしは戒の手の上からそっと手を重ねて、戒を見上げた。


「もう時間です。あまりぐずぐずしてると怪しまれる。俺は先に出ますよ、戒さん」


キョウスケがそれだけ言って、背を向け廊下に出た。




「あいつが…龍崎 琢磨がお前に危害を加えることはないだろうが、



危険を察知したら、中止を言い渡せ。




俺たちは、部屋の外で待機してる―――」




戒は眉を下げて、内線電話の受話器を手にとりあたしに向けてくる。


部屋の番号をプッシュして、


叔父貴に連絡しろ、とのことだろう。




「絶対に助けるからな」





戒は小声でそれだけ言うと立ち去ろうとした。




『はい』




電話の受話口から叔父貴の応答する声が聞こえる。


あたしは立ち去ろうとする戒の腕を引き、送話口を覆いながら背伸びした。





必ず成功させる。






そうゆう意味で戒にキスをすると、戒はびっくりしたように目を開いていたものの


数秒の口付け後、あたしの頭を軽く撫で今度こそ部屋を後にした。