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「お部屋は二部屋用意させました。戒さんとキョウスケさんが一部屋。


お嬢さんが一部屋。


これがキーです」


キリさんにカードキーを手渡された。


「せっかく同じホテルに居るさかい、うちと同じ部屋にすればええやないの」


おかんは渋っていたが、


「戒ももう母親と同じベッドで寝る歳やないさかい、好きにさせぇ」


親父は苦笑い。


一方響輔の方は…


「せっかく母さんと東京のホテル泊まれるんやし♪響輔邪魔やし、好きにせぇ」


響輔のおやっさんは弓枝姐さんの肩を抱き寄せ、響輔をしっし。


響輔、邪魔者扱いされてるし。



そのやり取りがされている一瞬の隙を狙いながら、


「じゃ、俺らこっちだから」


朔羅とすれ違う瞬間、俺たちはそっと手を触れ、朔羅の手からカードキーを抜き取った。


ちらりと部屋№を確認すると、3210室となっていた。


確認だけすると、すぐに


「朔羅」もう一度振り返り、


「飯うまかったな。今度俺がもっと“うまい”飯屋に連れて行ってやるよ」



必ずうまくやり遂げてみせる。


そういう意味を含めて。



俺が朔羅の髪をそっと撫で、頬にチュッとキス。


「戒さん♪やるやないか!」


響輔のおやっさんが楽しそうに手をたたいたが、俺はその言葉を聞き流し朔羅の耳元で


「カードキーサンキュ、バッグの中に」


「何やってるんだ」


龍崎 琢磨が俺をすぐに引き剥がし、


大人たちの前でほっぺたチューのパフォーマンスは効果があったようで、


誰も俺の不審な行動を目に留めていない。