叔父貴が出て行ったことを知って、あたしは戒の腕から降りた。


「戻るよ!キョウスケが危ない」


「ああ、だがあいつは響輔と引き換えにって言った。


てことは、響輔をここに寄越す可能性が大きい。


何考えてんだ?」


「叔父貴の宣戦布告だよ。やれるものならやってみろ…って。


楽しんでんだよ、あの人は」


あたしが早口に忠告して個室を出ようとすると


「宣戦布告かよ。


舐めくさった真似しやがって」


戒がドンっ!と隣室を隔てる壁を力強く叩いた。


ドアを開きかけていたあたしはわずかに振り返り、壁に手をついている戒を見つめた。




「戒―――……


あたしやっぱり叔父貴の部屋に行くよ。


あの様子なら絶対何か知ってる。





パソコンを手に入れるのは、あたしにしかできない」



「でも…!」


戒がわずかに目を吊り上げたが、





「あたしは信じてる。



必ずお前が助けてくれるってこと。



危険は承知だ。




だけど何もせずに今日と言う日が終わったらきっと何も分からないままだ」



「朔羅―――……」


戒があたしの手を握り引きとめ、あたしはその指の先をそっと握り返して笑顔を浮かべた。





「大丈夫、あたしは信じてる。




お前が助けてくれることを」




それだけを伝えて、あたしは戒の手から手を抜き取ると、


今度こそ個室を出た。