「くつろいでいはります?お飲み物のお代わりは?」


キョウスケパパは叔父貴の不機嫌にも気づかず…って言うか気付いててもスルー??して、それはそれはスマートな仕草であたしを席へ促すと、


またも


ゴンッ!


今度はグラスをあたしの目の前に置いた叔父貴が、額に青筋を浮かべて




「水のお代わりを頼もうか」




とキョウスケパパを、それはそれは怖いお顔で睨み降ろしていた。


叔父貴…怖ぇえよ。かりにも客人だろ??


キョウスケパパは苦笑いで肩をすくめ、ウェイターを呼び寄せるとグラスを取り替えさせた。


「あなたもなかなか面白い叔父さんをお持ちや」


人差し指を立てながらキョウスケパパは面白そうに言って、ウィンク。


あたし……大人の男の人で最強に美しくかっこいいのは叔父貴だと思ってたけど、肩を並べるぐれぇだな。


女殺しめ。


「あの親父…何とかしたい」


隣でキョウスケがテーブルの上で拳を握り、うなだれている。


「同感だな、闇に葬り去るか。手を組むか?キョウスケ」


叔父貴がキョウスケの肩を軽く叩き、


「おやっさんのアレは挨拶みたいなもんだ?女と見れば口説かなきゃ失礼だとか思ってんじゃねぇの?


気にするなよ」


戒は同情気味でキョウスケの肩をポン。


「だから余計たちが悪い」キョウスケは手のひらを震わせてわなわな。


鈴音姐さんも強烈だったけど、キョウスケパパも強烈だな。


「あれでも仕事は真面目なんですよ。信じられないけど」


キョウスケがため息を吐いて、キョウスケパパの背中を目で追っていると、


キョウスケパパは耳にわずかに手を当て、颯爽とした歩き姿で出入り口の扉を開いた。


観音開きの扉を開けて、入ってきた男に軽く頭を下げる。






「どうぞ。いてはりますよ」






さっきのにこやかな笑顔から一転、真面目で厳格すら漂わせた表情であたしたちの方を手で促し、現れたのは―――




ただ歩いてるだけなのに。


ただそこにいるだけなのに。




伝わってくる威圧感とただならぬ迫力。




ドキン、ドキン…



エレベーターでその姿をちらりと目に入れたときにも感じた緊張が走り、あたしの鼓動が乱れる。






「はじめまして、白虎会の虎間 道惨(トラマ ドウザン)と申します。




よろしゅう」







戒のおやっさん―――