「だからっていきなり水掛けるなや!」


まともに顔に掛かった水を、あたしがハンカチで拭いてると、


「朔羅ちゃん♪おひさしゅう。


ほんますんまへんなぁ。いたらん倅で。ここどうぞぉ」


鈴音姐さんは自分の隣をぽんぽんと手で指し示し。


え…そこ!ですか……


特等席…じゃなくて罰ゲームだなこれ。


なんて顔と声には出せず、無理やり浮かべた愛想笑いを浮かべてそそくさと座る。


どうやらあたしは鈴音姐さんにかぁなぁり!気に入られてる。


ありがてぇことだけど。こー見えて彼氏のママだし。


「白虎の女はみぃんなお姫さまみたいに大事にされるんえ?


朔羅ちゃんもうちに来たら、お姫さまになれるさかい、それまで戒をしっかり躾けておくわぁ♪」


「お姫さまですって。ステキね」


キリさんがソファの手すりに腰を下ろして足を組むと鴇田を目配せ。


「お前は俺の家で女王様だろ」


鴇田の発言にぎょっとした。


なぜかすぐに浮かんできたのがSMの女王様。似合いすぎだぜ、キリさん。


「女が主導権握ってた方が絶対家庭はうまくいくもんどすえ。鴇田はん、夫婦円満の秘訣は妻を怒らせないようにすること。


それだけどす」


鈴音姐さんは得意げに言って、キリさんの膝をぽんぽん。


キリさんはその手に自分の手を重ねて、にっこりあたしの方を見てきて


「だ、そうよ?朔羅さん。女性の大先輩のアドバイスありがたいですわね」


男陣は同じタイミングでがくりとうなだれた。


「その心配はいりませんよ、すでに戒さんはお嬢の尻に敷かれてるから」


とキョウスケがさらりと言って


「朔羅はお姫さまより、女王様より、殿さまだよな。もしくは武将??」


戒はキョウスケにぼそっと耳打ち。


叔父貴は同意する意味で「くくっ…」と声を押し殺して笑う。



てめ!聞こえてるんだよ!


てか叔父貴も納得してんじゃねぇ!