鈴音姐さんはバスローブ一枚。黒い髪はしっとりと水に濡れていて、顔も化粧を落としてある。


「おかげさんで、お気に入りの着物一着ダメにしてもうたわ」


鈴音姐さんは少し残念そうに額に手をあて吐息。


「弁償いたしますよ。予期せぬトラブルとは言え、ここに呼んだのは俺ですから」


叔父貴が姐さんをソファに促し、


「ほんま?助かるわぁ。おおきに。


龍崎はんはえらい太っ腹で、結構どすなぁ」


鈴音姐さんは優雅に白くて細い足を組み、近くにあったグラスの水をこれまた優雅に一飲み。


すっぴんの鈴音姐さんは、それでもすっげぇ美人に違いなかった。


てか、はじめて気づいたけど…


化粧落とすと、やっぱり戒に似てるし!


美形一家だな。どーなってる、虎間家の遺伝子。


鈴音姐さんはネコみたいな大きな目じりをわずかに険しくさせると、飲んでいたグラスの中をいきなり戒にぶちまけた。


バシャッ!


思い切り水を掛けられて、戒はびっくり。


あたしもびっくり!キョウスケも……


分からん、こいつ驚いてるのかどうかも謎だ。





「戒!あんた、いつまで朔羅ちゃんをその場に立たせて置く気ぃ!


男なら、もっとスマートに女をエスコートせなあかんで!」





え、エスコート…


ありがたいことだけど、こ…怖い。


てか相変わらず炸裂だな。