戒はキリさんの半裸状態にさぞ鼻の下を伸ばしてると思いきや、真剣な顔でいきなりキリさんの腕を引き


彼女の耳あたりにそっと顔を寄せた。


「か、戒!おめぇ何やってんだよ!」


嫁の目の前で他の女にサカッてんじゃねぇ!


思わずキリさんから引き剥がすと


「キリさん…あなた何故この時間帯にシャワーを?」


と戒はこっちがびっくりするほど真剣なまなざしでキリさんを見据えてる。


確かに中途半端な時間帯だ。


何で……


だがキリさんは戒の意味深な質問にもたじろぐことなく


「あら、そんなこと聞きたいの?イケナイぼーやですわね。


彼と一戦交えたから」


キリさんは肩をすくめて鴇田の方を色っぽく目配せ。


「キリ!冗談はよせ」


鴇田は本気になって眉を吊り上げ


「つまらない反応ね。ロビーの噴水が壊れたことは知ってるでしょう?


あの噴水が壊れたとき、その場に居合わせて頭から水を被ってしまったから」


「キリさんが…?」


それでも戒は疑わしそうに目を細め、


「響輔、裏を取れ」短く言うと


「了解」


キョウスケは部屋を出て行こうとした。


だがその行方を鴇田が阻む。キョウスケの前に立ちはだかって、


「今は大人しくしててもらおう」


扉に背を向けた。


な、なんだよ。噴水が壊れたことと、シャワー浴びてることがいけないことなのかよ。


何が何だか分からず戒とキョウスケを見比べていると、





「その必要はあらへんで。そのキリはんが言うてはることは、ほんまのことや。


うちもその場に居ったさかい」






この声―――……


ドキリ、として目を開くと



戒も同じように息を止め、その場で硬直した。


部屋を出て行こうとしたキョウスケすらその歩みを止める。








鈴音姐さん。