キョウスケのその妙に堂々とした態度に、警官たちはたじろぎながらもこいつの財布に手を伸ばす。


「鷹雄 響輔。平成xx年11月1日生まれ……大学生か?」


免許証でも見たのだろう、警官が確かめる意味で聞いてきてキョウスケは頷いた。


「喧嘩を売られたのは確かですよ。でもそれだけです。


俺たちは賽銭泥棒なんてしていません」


キョウスケの意見を聞き流しながら、警官たちはキョウスケの財布をごそごそ。


「財布の中にはキャッシュカードが一枚とクレジットカードが一枚…万札が二枚と、小銭が…これは何だね」


警官たちはキョウスケの財布の中身をテーブルに並べてじろじろと無遠慮な目で眺め、キョウスケの財布から転がり出てきたUSBメモリをしげしげ。


「ただのUSBメモリです。学校のレポート作成とかに使ってるんです」


キョウスケは迷惑そうに顔をしかめ、警官たちもそのUSBメモリにそれほど興味がなかったのか、特に中身を調べることなくテーブルに並べた。


「君たちも出して」


すぐにあたしと戒の方を目配せして、戒は「ちっ」と面倒そうに舌打ちしながらも長財布をテーブルに放り投げた。


あたしもバッグから財布を取り出し、


「所持金、¥1,305!」


警官はそっちの方に驚いていた。


「マジかよ。お前そんだけしか持ってなかったん」戒が目をぱちぱちさせて


「うっせぇな!銀行行く暇がなかったんだよ!」


あたしはごにょごにょと言い訳。




「俺と居れば大丈夫やよ♪


俺、女には財布出させへん主義やから」





戒……ありがてぇけど



「随分ご立派な主義だが、これは立派とは言えんな」




警官が戒の財布から取り出したのは正方形のパッケージで…


「ぅわぁ!」


戒は警官がつまみあげたゴムをバっ!と慌てて奪う。



「随分ご立派な主義だぜ」


あたしとキョウスケは戒を白い目でじとっ。


「備えあれば憂いなしって言うじゃんか~?」


と、戒はぎこちなく笑ってそれを奪った。