「白い女―――…?」


キョウスケが目を細めてあたしを見据えてきて、あたしはこくこく頷いた。


「狙撃手は女と言うことですか…


戦場慣れしてる戒さんを仕留めたぐらいですから、男かと思ってましたが」


「女だったよ!意識失う前にちらりと見えた!


黒い長い髪で!白いパンツスーツに白いパンプス履いてた!」




「なるほど、それで白い女か―――」




戒が顎に手をやって首を捻る。


「着物じゃないだけましだよ!青龍会本部で会ったイチみたいなかっこしてたら…」


お化けがハジキ持って襲ってきたなんて、それこそ現実離れしてるケド


少なくとも現実的なスーツで怖さは半減だ。



ん??着物…?


「あれ、あの女!イチじゃねぇの!!」


あたしはキョウスケに勢い込んだ。


てめぇの女ぐれぇてめぇで躾とけ!ってな具合に。



「それはねぇな」
「それはありません」




戒とキョウスケ二人の返事が同時に返ってきて、あたしは一人いぶかしむように眉を寄せた。


キョウスケは若干迷惑そうに両手を挙げ、


「通話が途中で切れてお嬢に何かあったかと思い、


同時に一結が何かを仕掛けたのかと思って彼女のケータイに電話を掛けました。


鴇田さんが出て、一結は風邪をこじらせて鴇田さんの自宅で療養中だそうです。


ついでに言うと、その時間帯ドクターが彼女の往診をしていたようで、アリバイは成立しますね」


という事は…ドクターは白へびの疑いから消えた…?


「時間的な問題もあるやろうし、それより何より


現場からオピウムの香りが香ってきた」


「オピウム―――…彩芽さんが…?」


キョウスケも目を開いて、口元に手をやる。



「だが今は香水の香りどころか血の臭いすら匂わへん。


ちっ。


匂いが混在して嗅ぎ分けられへん」



戒はそっと鼻を押さえると、再び視線を険しくさせて地面を睨んだ。