「戒!」
思わず駆け寄ろうとすると、男の腕が伸びてきてあたしの首を捕らえる。
両手で締め上げられて、あたしの体ごと持ち上げた。
な、なんつう力……
恐ろしいほどの力強さで気道が締まり、息ができない。
「朔羅っ!」
戒が再び起き上がり、一瞬だけ男の力が緩まった。
その隙をついて、あたしは男の頭を両手で掴むと
「でやぁ!!」
ゴンっ!
男に思い切り頭突きを食らわした。
男の拘束から逃れて、あたしは地面に着地すると荒い息を整えるためにわずかに咳き込み、ちらりと境内を見渡した。
砂利の広場の隅に手水場がある。
あそこだ!
あたしは戒と反対方向目指して走り出した。
「待て!このクソアマぁ!!」男が追いかけてくる。
「朔羅!離れるなっ!」
戒の怒号が聞こえて、
「二人一気に相手は面倒だ!まずは一人片付ける!お前はそっちを任せたぞ!」
手水場にたどり着くと戒に怒鳴った。
あたしは手水場に置いてあった柄杓を掴むと、石造りの水がめから水を掬い取り向かってきた男にぶっかけてやった。
「くそっ!」
まともに顔に水を食らった男は一瞬だけ顔を逸らし、その隙をついてあたしは男の背後に回りこみ、男の背中に一発蹴りを入れ、前のめりに倒れた男の首に柄杓の柄を回した。
力だったらこの男の方が強いだろうが、柄杓の柄が首を絞めていてその半分も力が出ていないようだ。
だが造りの弱い木の柄が
バキぃ!
途中で割れ、拘束から解かれた男がガクリと地面に手をついた。
それでもまだ立ち上がろうと身動きしている。
あたしはその男の首根っこを掴んで水がめの中に顔を突っ込んだ。
「ガボゴボッ!」
水に顔を入れられた男がじたばた手を動かし、その隙にあたしは男のズボンのベルトからハジキを抜き取った。
「てやんでぃ!乙女の首を力いっぱい絞めた罪は重い、そのこと知りやがれっ!」
ハジキのグリップで男の頭を殴ると、
ゴボゴボッ!
男はしばらくの間、あたしに水に顔をつけられてじたばたしていたが、割と早い段階で静かになった。



