「お前、気付いたか…?人の気配がする」
足音はしなかった。生い茂る木々の影に身を潜めているのか、こっちからじゃ姿が見えない。
人影はないものの、押し殺すような殺気だけは感じとれた。
「…一人…いや二人は居る。
二時の方向に一人、十時の方向に一人」
子供の幽霊話や、お社の有無の確認ですっかり神経がそっちに行っていたが、戒に言われて気付いた。
「朔羅、離れるなよ」
戒があたしの手をぎゅっと強く握ってきて、あたしは大きく頷いた。
戒が走り出す。
あたしもそれについていった。
鳥居の小路を飛び出ると、大きなご本堂が現れた。
砂利の広場が広がっている。
ガサガサッ!
背後で大きな葉音がして、黒いジャケットと黒いパンツ姿の男が一人木の陰から出てきて、あたしたちを目に入れると慌てて踵を返す。
「待て、こらぁ!」
戒が怒鳴り声を上げて、同時に違う方向から男がもう一人あたしに飛び掛ってきた。
「見つかったか!口封じだ、やっちまおう!」
男が怒鳴り声を上げて脚を振りかざし
あたしは一旦戒から手を離すと、男の回し蹴りを何とかかわした。
動きが速い。
「朔羅!」
戒が手を伸ばしてくるが、その手に掴まることなく、耳のすぐ横で風を切る音が聞こえ、次の瞬間またも脚が飛んでくる。
あたしは左腕でその蹴りを受け止め、右ストレートを繰り出すもの男の頬に命中したが、男は軽くよろけただけで素早く体勢を整えた。
見たこともない男だ―――



