こ、こんな真昼間から出るもんじゃないし。
第一子供の見間違いかもしれないし。
それでも
「か、戒、やっぱ帰ろう!」
あたしは虫も雷もダメだけど幽霊とかも無理なんだよ!
ホラー映画は絶対一人で見ないし、お化け屋敷だって行きたくない。
ホントは肝試しだってイヤだったし…
そんなことをブツブツ口の中で唱えると、戒はあたしの意見を無視してスタスタ。
ぅをぃい!!!
あ、あたしを一人置いていくなーーー!!
慌てて戒を追いかけてカットソーの裾をきゅっと握ると、
「あ…わり。ちょっと中の様子見るつもりで覗いただけ」
戒はあたしの手を握ってくれた。
手を繋いだまま―――
戒は赤い鳥居が連なる小路をじっと見つめている。
その真剣な顔に、ドキリと嫌な汗があたしの額に浮かぶ。
「お、おい…お前もまさか幽霊見たとか言いだすんじゃないだろうな…」
「幽霊なんて見てへん。
それより、匂いが漂ってきた。
オピウムの香りや」