「新垣さんのはサ、単なる思い込みだろ?
思い込みって怖いよな~」
あたしがこの話題を変えるようにことさら明るく言うと
「思い込み―――か」
戒は違ったことを考えはじめたようだ。
数分の沈黙があって…
な、何考えてるんだろう……と思っている最中に
「お待たせいたしました。デザートの黒蜜あんみつでございます」と最後のデザートが乗せられた器を運んできたお店のおねーさんは
あたしたちが二人して壁際に寄り添っているのを見て一瞬だけ目をぱちぱち。
「こちらにご用意させていただきますね」
と黒蜜あんみつの器をテーブルに並べてそそくさと出て行ってしまった。
べ、別に!いかがわしいことしてないからいいんだけど!!
でもなんとなくキマヅイ。
……のは、ほんの数秒で
「黒蜜あんみつ!」と戒は目を輝かせた。
一口食べて
「うっま!♪朔羅もほらっ。あーん」とスプーンにのったあんみつをあたしの顔の前でふらふら。
食えってのか??
口元まで差し出されたスプーンに戸惑ったものの、個室だし誰も見てないし
「いいや!」と投げやりな気分で差し出されたあんみつをパクっ。
戒のリアクション通りそれはうまかった。
しかし
「すみませぇん、スプーン一個置き忘れてしまったみたいで…」
またもお店のお姉さんが予告なく登場して、あたしはその場で固まった。
「ごゆっくり~♪」
店員さんは口元に手を当て苦笑いで慌てて去っていく。
わ゛ーーー!!やっぱ恥ずかしいっ!!