「何だって言うんだよ」
思わず戒のカットソーの裾を引っ張って引き止めると
戒が顔だけを振り向かせて目を細めた。
「それはこっちの台詞。
お前…
何で俺を拒否すんだよ。
俺が近付くとそんなに嫌なんかよ」
拒否―――したつもりは
ある、ケド
でもそれは戒が嫌とかじゃなくて……
「もしかして俺が新垣さんと浮気してるかも、ってまだ疑ってる?
それで不安なのか?」
戒がちょっと心配そうに聞いてきて、あたしはゆるゆると首を横に振った。
「じゃぁ響輔と川上のことを考えて?」
その問いかけにも首を横に振ると、
戒はまたも顔を背けて
「じゃ、何でだよ。
俺、お前が時々…分かんね。
好きだから近づきたいって思うのがふつーだろ?」
と少しだけ苛立ったように前髪を乱暴に掻き揚げてまたも顔を背ける。
あ、あたしだって好きだから……近づかれるとドキドキするし…
でも
何て言って説明すればいいのかわかんないけど
とにかくあたしは戸惑っている。
あたしは戒のカットソーを握る手を緩めて俯いた。
でも言わなきゃ分かんない。
いつもあたしは戒の、何にも言わなくても分かってくれる優しさに甘えてたけど
でも
いつまでも甘えてるわけにはいかない。
「きゅ……急に距離をつめられると、あたしもどうすればいいんかわかんないんだよ。
あ、あたし付き合ったの戒がはじめてだし……
嫌いじゃないし…むしろ大好きだけど、
だからこそ、あたし…りょ…両想いてのはじめてだし。
だから尚更…どうしていいんか分かんない」
言いかけてあたしは口を噤んだ。
あたしの言葉に戒は一瞬だけキョトンとしたものの、すぐにちょっとだけ顔を赤くして
あたしに背けていた体を反転させてあたしに向き直った。



