キョウスケは電話の向こうで小さく吐息を吐き


『寝た…って言うのは文字通りの意味ですよ。


つまりは隣同士で眠っただけ。彼女に何もしてません』


呆れたように言う。


それでも疑わしそうに


「本当に?」と聞くと


『ちょっとした口論になってケータイと服を奪われて、ベッドに押し倒されて…何故か添い寝を強要されただけですよ』


服を奪われて…添い寝を強要…??


キョウスケが嘘をついているとは思えなかった。


って言うかそもそも今更俺にイチとの関係を嘘ついてどーするって話だが。


イチめ…お前何やってんだ。


急にキョウスケが不憫に思えてきた。


「迷惑掛けて悪かったな」


一応謝っておくと、


『…もう彼女には色々驚かされっぱなしですよ…』とキョウスケの憔悴しきった声。


「…すまん」


もう一度謝って、俺はがくりとがくりと頭をうな垂れた。


『寝てるのであれば今日は結構です。大した用じゃないし。


また掛けます』


キョウスケは俺が何か言う前に一方的に通話を切り、


「キョウ…!」


俺が言葉を掛けると、ツーツー…とむなしい電子音が聞こえてくるだけだった。