「何の用だ。イチなら寝てるぞ」


もう一度言ったが、俺はすぐに訂正した。


「勘違いしてもらっては困るが、私たちはそうゆう関係じゃない」


『しませんよ』


キョウスケが短く答えて、その飄々とした態度が妙に鼻についた。


「お前たちは―――どうゆう関係なんだ」


イチは…自分の片想いだと言っていた。


キョウスケの方がどうなのか、俺は気になった。


遊びだとしたら―――……





『一結との関係?



彼女と一回寝ました』





またもさらりと言われ、握ったケータイがミシリ…と音を立てた。


寝――――……


どこからか湧いてくる怒りの感情を押し殺し、俺は空になったグラスに再び乱暴にウィスキーを注ぎいれた。


『俺が憎いですか?


“娘”の体を手に入れた男が―――』


キョウスケが淡々と聞いてきて、


出掛かった「当たり前だろ」と言う言葉を俺は慌てて飲み込んだ。


キョウスケはイチが俺の近親者だとまでは見抜いてはいるが、イチが“娘”だと言うことまで気付いてないはず。


気付かれてはならない理由がある。





こいつにだけは。