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俺のマンションに着いた頃には、イチの予想した通り雨が降り出した。
雨の音を窓の外で聞きながら、衛に言われた通り俺はイチの体温を測った。
体温計が指し示した数字は
「38.5℃…」
体温計を見て俺はため息。
「何で早く言わなかったんだ」
「何でって…熱あるなんて知らなかったもん」
イチはふてくされて布団を引き上げると顔まですっぽりくるまった。
「待て。お前薬飲め。今持って来てやるから」
「いらない。一晩寝れば治る。
放っておいてよ」
布団の中からくぐもった声が聞こえてくる。
「あんたにはうつさないように気をつける。あんたはソファで眠れば?」
うつさない、と言う気遣いはありがたいが、俺がソファだと?
ここ、一応俺のマンションなんだが。
さっきまでしおらしく娘っぽくしてたのに、ベッドに横になって気が抜けたのか、相変わらずの我侭っぷりを発揮。
「寝室は譲るが、せめて薬は飲め。
どうせ明日も仕事だろ」
俺が布団の上から声を掛けるとイチは面倒そうに顔を覗かせた。
「明日は秋ドラマの撮影が入ってる。
ベッドシーンなの」
ベッド……
俺は無言で腰を上げて扉を開けた。
「薬は飲まなくていい。仕事は休め」
「冗談に決まってるじゃない。バカじゃないの?
あたし一応まだ未成年だから、そうゆうのはホゴシャに確認取るのが常識でしょ」
そのホゴシャに向かって『バカじゃない』とは、口の利き方がなってない。
けど
ベッドシーンじゃなくて良かった。



